裁量トレードで使うテクニカル指標の精度を高めたいなら、通貨単体分析に挑戦しましょう。
USDJPY・EURUSDのようなFX通貨ペアではなく、USD単品・EUR単品の強さを計測することで、より信頼性の高いテクニカル指標「通貨単体EMA(仮称)」を形成できます。
通貨単体EMAは信頼性の高い指標ですが、主要通貨8ペアの平均値で割り出す必要があるため処理が重く、FXプラットフォームには用意されていません。プログラミングで専用インディケーターを作成する必要があります。
この記事では通貨単体分析トレードのやり方・始め方を解説していきます。
通貨強弱トレードの基礎知識
通貨強弱比較とは?
通貨強弱比較とは、USDJPY・EURJPYなどの通貨ペアではなく、USD・JPY・EURなど単体での通貨強弱を比較するアプローチのこと。通貨ペアだけを見るより通貨の強弱を相対的に把握しやすいです。
通貨の強弱は、以下のチャートのように折れ線グラフで表示するのが一般的です。

例えばUSDJPYチャートが上がっているときは、USDが強く、JPYが弱い可能性が高いです。ただ2つの通貨ペアの相対関係を比較しているだけなので、根拠としては弱いです。
もしかしたらJPYが極端に弱いだけで、USDは普通の勢いなのかもしれません。USDJPYチャートだけを見ていても、USDの相対的な強弱は計測できないのです。
そこで主要8通貨のペアで相対的に比較することによって、JPYが極端な変化をしても、他の通貨ペアとの比較でUSDの強さを相対的に計測できるようになります。
通貨強弱チャートを提供しているサイトはこちら。
- babypips Currency Strength Meter:見やすくておすすめ!(最強・最弱が一目でわかる)
- MetaTrader Labo 貴金属強弱 日次:ゴールド・シルバーの強弱がわかる
- 仮想通貨(暗号資産)強弱 日次:仮想通貨の強弱がわかる
- TradingView:秒ベースで表示可能
- OANDA 通貨強弱比較チャート:NYクローズ(朝6時)が起点。情報更新が早い
- Currency Strength Chart:情報量が少ない
- FX-Labo Currency Strength Chart:
- Kiminoa FX 通貨の強弱
ただ通貨強弱チャートにはある欠点があるので、トレードに直接使うのはおすすめしません。
通貨強弱チャートよりも通貨単体分析の方がおすすめ
通貨強弱チャートは主要通貨の相対的な強さを表示させてくれますが、欠点もあります。
グラフの基準となっている対数変化率はグラフの1番左の時間を基準にしており、その基準時間が変わるとグラフの数値も大きく変化してしまいます。
以下のチャートは起点が6月23日6時の場合です。

次のチャートは起点が6月21日3時30分の場合です。

グラフの最新時間はほぼ同じですが、通貨の強弱率が少し異なります。
FXトレードで通貨の相対的強さを知ることは重要ですが、その表示方法として対数変化率を使うのはおすすめしません。それよりも主要通貨の7つの通貨ペアで平均化させたほうがいいです。
例えばEUR単品の通貨の強さを知りたいなら、以下のように計算します。(各通貨の価格レベルから合成インデックスを作る)
- (EURUSD + EURJPY/100 + EURAUD + EURNZD + EURCAD + EURCHF + EURGBP)/7
このように平均化することで、EUR以外の通貨の影響をできるだけ少なくし、EUR単品の通貨の強さを計算できます。またこの数値を移動平均として計算することで、既存のEMA・SMAよりも信頼度の高いテクニカル指標として使うこともできます。(通貨単体EMAと呼ぶことにする)
通貨単体EMAをテクニカル指標として表示させる方法はこちら。
- MT4/MT5のカスタムインジケーターとして作成する
- cTraderのインディケーターとして作成する
- TradingViewのPINEスクリプトでインジケーターを作成する(1分足以下の場合に推奨)
通貨単体EMAは既存のテクニカル指標ではないため、カスタムインジケーターとして作る必要があります。作成にはMQL4/MQL5などのプログラム言語を使う必要がありますが、現在はLLMで簡単に実装できます。(Google Gemini 2.5 Proなど)
cTraderの場合はデスクトップ版cTraderでインジケーターを作成し、同じアカウントでウェブブラウザ版cTraderにログインすることで、ブラウザ版でオリジナルインジケーターを使うことができます。
通貨単体分析では8通貨の強弱を計算するため、処理が重くなりやすいです。1分足以下の時間足で運用するならTradingViewを使ったほうがいいです。

ただしTradingViewでカスタム計算ツールを使うにはプラス以上の会員に、上級者に人気な秒足チャートを表示させるにはプレミアム以上の会員になる必要があります。(いきなり有料会員になるのではなく、無料会員になってから有料会員に変更すると割引価格が提示される)

通貨単体EMAは既存のEMAよりも信頼性の高い指標として使うことができます。EMAが緩やかに傾いているならピラミッディングトレードを、価格がEMAから大きく乖離しているなら逆張りナンピンを仕掛けましょう。
学習コストが低い(FX初心者でも再現しやすい)
通貨単体トレードは学習コストが非常に低く、FX初心者でも再現しやすいです。
基本的にはEMAが上向きなら買いピラミッディング、EMAが下向きなら売りピラミッディング、価格がEMAから大きく乖離しているなら逆張りナンピンをするだけです。(マーチンゲールはリスクが大きいので非推奨)
既存のEMAによるトレードと大差ありませんが、通貨単体MAは既存のEMAよりノイズが少なく、期待値の高いトレードがしやすいです。
例えば通貨ペア「EURUSD」のEMAだと、EUR・USDのどちらかで大きな変化があればそれがノイズになってしまいますが、通貨単体EMAあれば主要8通貨で比較しているためノイズも少なくなります。
特に1分足以下のEMAはこうしたノイズが大きくなりやすいです。EMAを使ったスキャルピングトレードなどをするなら、通貨単体EMAに切り替えることをおすすめします。
通貨強弱トレード(裁量)のやり方
手順1:FXプラットフォームに単体通貨EMAを実装する
通貨単体EMAは既存のテクニカル指標として実装されていないので、自力でカスタムインディケーターとして作る必要があります。
通貨単体EMAの実装方法はこちら。
- MT4/MT5のカスタムインジケーターとして作成する
- cTraderのインディケーターとして作成する
- TradingViewのPineスクリプトでインジケーターを作成する(1分足以下の場合に推奨)
MT4/MT5で作る場合、対応するFXプラットフォームのIME(メタエディター)からインディケーターを作成します。
cTraderで作る場合、デスクトップ版cTraderでインディケーターを作成します。同じアカウントでログインすることで、ウェブブラウザ版・アプリ版でも作成したインディケーターを使えます。
TradingViewで作る場合、Pine Scriptというプログラム言語で作成します。ただしカスタム計算インディケーターをチャートに表示させるには、有料会員(プラス以上)である必要があります。
インディケーターを作るには対応するプログラム言語を学ぶ必要がありますが、現在ではLLMでコーディングを自動化できます。利用するLLMはGoogle Gemini 2.5 Proがおすすめ。Googleアカウントを持っていれば無料で利用できます。
手順2:通貨単体EMAを基準に取引する(ナンピン・ピラミッディングなど)
通貨単体EMAの実装ができたら、それを基準に取引します。取引のやり方はシンプルで、既存のEMAと同じようにナンピン・ピラミッディングをしていくだけです。
基本的なトレードロジックはこちら。
EMAが上方向に傾いている | 買いピラミッディング |
---|---|
EMAが下方向に傾いている | 売りピラミッディング |
価格がEMAから大きく乖離している | 逆張りナンピン |


手順3:含み益が伸びなくなったら、ポジションを一括決済する
含み益がこれ以上伸びないと思ったタイミングで、ポジションを一括決済します。
トレードロジックごとのポジション決済タイミングはこちら。
買いピラミッディング | 上値更新が止まってレジスタンスライン形成 |
---|---|
売りピラミッディング | 下値更新が止まってサポートライン形成 |
逆張りナンピン | 価格が長期EMAに近づいたら |
上昇トレンド中に買いピラミッディングを行っている場合、上値の更新が止まってレジスタンスラインが形成されたらポジションを一括決済します。
ここで下落トレンドが始まりそうなら、売りピラミッディングに切り替えることで、さらに利幅を稼ぐことができます。
オーバーシュートからの逆張りナンピンをしている場合、価格がEMA付近に戻ったら利確します。オーバーシュート後は価格がどう動くか予想がつかないので、下手にポジションは持たないようにしましょう。
通貨強弱トレード(EA自動売買)のやり方
前提:VPS(仮想専用サーバー)を契約しておく
EA自動売買をするには、VPS(仮想専用サーバー)が必須です。VPSはオンラインでWindowsOS環境をレンタルできるサービスで、24時間EAを稼働させ続けるなら必須となります。まだの方は契約しておきましょう。
VPSは国内・海外で2種類あります。日本語サービス・信頼性の高さを重視するなら国内VPSを、約定速度(サーバーとの距離)、価格的なコストパフォーマンスを重視するなら海外VPSを選びましょう。
国内VPSについてはコスパ重視ならWebARENA Indigo、2週間の無料お試しから入りたいならさくらのVPSがおすすめ。海外VPSについては安定性重視ならVultr、コスパ重視ならCONTABOがおすすめです。
VPSのメモリ(RAM)は4GBプランを推奨しています。(料金相場は月額3,000円-4,000円)

手順1:MQL4/MQL5の通貨強弱トレードEAを作成する
EA自動売買をするなら、自動売買プログラム「EA」も必要です。EAを作るにはMQL4/MQL5などのプログラミング言語が必須ですが、現在はLLMなどの普及で実装ハードルが大きく下がっています。(cTraderを使っているならcBotでもOK)
利用するLLMはGoogle Gemini 2.5 Proがおすすめ。Googleアカウントを持っていれば無料で使えます。チャット1回で使えるのは100万トークンまでですが、EAを作ったり修正したりするだけなら充分です。
Gemini 2.5 Proに入力するプロンプトはこちら。
MQL5で通貨強弱EAを作ってください。
トレードロジックは以下のようにしてください。
- 基本トレードロジック:最強・最弱の通貨を比較判断し、最強通貨のトレンド方向にトレードする
- エントリー時間はサーバー時間0時10分
- 比較通貨は「AUD, CAD, CHF, EUR, GBP, JPY, NZD, USD」
- 通貨強弱率は日足チャートを参照する
- トレードロジックは、ナンピン・ピラミッディングの同時運用。基準価格(エントリー時間の価格)の上下にリミット注文を5つ、ストップ注文を5つ設置する
- 運用ロットは1ポジションあたり0.1ロット
- ポジションの設置間隔は10pips
- ポジションのクローズ時間はサーバー時間23時50分。オープンポジションを一括決済し、未約定の予約注文も全てキャンセルする
- クローズ時間はサーバー時間23時50分。ポジションを一括決済する。その後翌日のサーバー時間0時10分にトレードを再開する
- 損切り(ストップロス)・利食い(テイクプロフィット)は設定しない
以下の理由からエントリー・クローズ時間を0時00分から前後に10分ずらしています。
- 月曜日の開場直後(サーバー時間0時00分から0時05分まで)はスプレッドが広がりやすいから
- 金曜日の閉場時間(サーバー時間23時55分)までに決済しないとポジションを週末に持ち越してしまうから
- ポジションを翌日に持ち越さないことでスワップポイントを節約できるから
ゴールドで取引したい場合は、比較通貨は「GOLD, SILVER, USD, JPY, EUR」の5つにしましょう。
EAを初めて作るときは、収益性よりも保守性の高さを重視しましょう。エントリー・決済のルールをシンプルにしておくことで、コードがシンプルになり、コンパイルエラーが発生しにくくなります。
なおコンパイルエラーが発生した時も、エラー詳細画面のスクショをLLMにアップロードすることで代わりに修正してもらうことができます。
手順2:デスクトップ版MT4/MT5にEAを設定する
EA自動売買をするときは、VPSにデスクトップ版MT4/MT5/cTraderをダウンロード・インストールしておく必要があります。(cTraderでもcBotで自動売買できる)
- XM MT4ダウンロード・MT5ダウンロード
- AXIORY MT4ダウンロード・MT5ダウンロード・cTraderダウンロード
- Tradeview MT4ダウンロード・MT5ダウンロード・cTraderダウンロード
FXプラットフォームのダウンロード・インストールが終わったら、保有口座にログインして、任意のチャートにEAを設定します。
MT4/MT5口座にログインできない時は、以下の記事を参考にしてください。

通貨強弱トレードにおすすめのブローカー・運用口座
通貨強弱トレードのような裁量トレードをするときは、取引コストの低いA-bookブローカーを使いましょう。(Tradeviewなど)あるいは出金力に優れた老舗のB-bookブローカーでもOKです。(XM・AXIORYなど)
評判の悪いB-bookブローカーだと裁量トレードで大きな利益を出したトレーダーに不正取引などの難癖をつけて利益没収してくる可能性があります。(VantageTradingなど)(情報ソース1・情報ソース2)
裁量トレード向け
XM スタンダード口座
裁量トレードの練習台ならXM スタンダード口座がおすすめ。3種ボーナスを活用することで、10万円の入金額を17万円ほどに増やすことができます。
またXMは取引口座レバレッジが1000倍と非常に高く、必要証拠金を低めに抑えられます。そのためナンピン・ピラミッディングで運用ロットやポジションを増やしすぎてもロスカットされにくいです。
スタンダード口座はスプレッドがやや広めですが、スイングトレードで運用する分には問題ないはずです。スキャルピング・デイトレをするなら取引コストの低いAXIORY・Tradeviewを使いましょう。


AXIORY ナノ口座(cTrader)
裁量トレードでcTraderを使うならAXIORY ナノ口座もおすすめ。取引コストが低く、cTraderにも対応しています。

cTraderはMT4/MT5より後発の高性能FXプラットフォームで、裁量トレードが便利になる機能が備わっています。例えば予約注文をドラッグ操作で設置できたり、SL/TPもドラッグ操作で設定できたり、日本時間で経済指標カレンダーが確認できたりなどですね。
AXIORYはXMと同じく老舗のB-bookブローカーで、出金トラブルはほとんど聞いたことがありません。裁量トレードで大きな利益を出しても、利益没収されるリスクは低いでしょう。FX初心者にもおすすめのブローカーです。
ただし注意点としてAXIORYはゴールドの銘柄レバレッジが100倍と低めです。ゴールドでハイリスク取引をしたいなら、1000倍のXMや400倍のTradeviewを使ったほうが良いでしょう。
Tradeview cTrader口座
裁量トレードで取引コストを最小限に抑えたいなら、Tradeview cTrader口座もおすすめ。スプレッドと取引コストが非常に低く、スキャルピングトレードで利益を出しやすくなります。


またTradeviewはA-Bookブローカーなので、決済ことにマイナススリッページが発生しにくいです。そのためスキャルピングトレードやHFTなど取引回数が非常に多いトレードロジックでも利益を出しやすいです。
EA自動売買向け
AXIORY ナノ口座(MT4)・テラ口座(MT5)
EA自動売買をするなら、運用口座はAXIORY ナノ口座・テラ口座がおすすめ。どちらも取引コストが低く、取引回数の多いEA自動売買で利益を出しやすいです。
利用するFXプラットフォームがMT4ならナノ口座を、MT5ならテラ口座を選びましょう。(市販EAを使うならEAの種類が多いMT4、EA開発するならデバッグしやすいMT5がおすすめ)


Tradeview ILC口座(MT4/MT5)
EA自動売買のコストを最小限に抑えたいなら、Tradeview ILC口座がおすすめ。
ただしILC口座は最大レバレッジが200倍と低めで、最小ロットも0.1ロットと大きめ、ストップアウトは100%も高めです。ナンピン・マーチンなどハイリスクなトレードロジックとは相性が悪いです。

プログラミングやLLM運用に自信があるなら、cTraderの自動売買プログラム「cBots」もおすすめ。Tradeview cTrader口座なら最大レバレッジ400倍で取引できるため、ILC口座より資本効率が良くなります。
