この記事では海外FX 仮想通貨の価格予想モデルを解説していきます。
価格予想モデルの基礎知識
FXの価格予想モデルとは、一言で言えば**「過去のデータから、未来の価格が上がるか下がるかを予測する数学的・統計的な仕組み」**のことです。しかし、その実現は非常に困難です。なぜなら、金融市場は多くの要因が複雑に絡み合う「ランダムウォーク(不規則な動き)」に近い性質を持つためです。
この困難な課題に挑むための、代表的なアプローチと重要なプロセスは以下の通りです。
主なアプローチ
- ① テクニカル分析ベース
- 考え方: 「歴史は繰り返す」という前提のもと、過去の価格パターンやチャート形状から未来を予測します。
- 具体例: 移動平均線、RSI、MACDといったテクニカル指標を計算し、「ゴールデンクロスしたら買い」のようなルールを作ります。機械学習では、これらの指標の値を「特徴量」としてモデルに入力します。
- 位置づけ: 最も古典的ですが、モデルの性能を左右する特徴量エンジニアリングの基本となります。
- ② 機械学習モデル
- 考え方: 人間がルールを見つけるのではなく、大量のデータからコンピュータ自身に「価格が上がる時のパターン」を学習させます。
- 具体例:
- LightGBM / XGBoost: 大量の特徴量(テクニカル指標、時間帯、経済指標など)から、予測に重要なパターンを高速かつ高精度に学習できます。現在の主流の一つです。
- サポートベクターマシン (SVM): 価格が「上がる」「下がる」の2択を分類する問題として捉える際に使われます。
- 位置づけ: 特徴量を人間が工夫して作り、その関係性をモデルに学習させるアプローチです。
- ③ ディープラーニング(深層学習)モデル
- 考え方: 人間の脳の神経回路網を模したモデルで、データの「時間的な連続性」や「長期的な依存関係」を自動で捉えることを得意とします。
- 具体例:
- LSTM / GRU: 時系列データの学習に特化したモデルで、過去の価格の文脈を記憶しながら未来を予測します。
- Transformer: もともとは自然言語処理(翻訳など)で使われたモデルですが、時系列の長期的なパターンを捉える能力が非常に高く、金融分野でも注目されています。
- 位置づけ: 特徴量エンジニアリングをある程度自動化し、データそのものから複雑なパターンを抽出することを目指すアプローチです。
データ・アイデアを求めるなら「Kaggle」がおすすめ
Kaggleは、モデル開発の**「インプット(材料とひらめき)」**を得るための最高のプラットフォームです。

- 理由1:高品質な「データ」がすぐ手に入る
- FXモデル開発の最初の壁は「データの入手」です。Kaggleには、世界中のユーザーがアップロードした高品質なFXのヒストリカルデータ(分足、時間足、日足など)が無料で公開されています。自分でデータを収集・整形する手間を大幅に削減し、すぐに分析に取り掛かれます。
- 理由2:世界中の天才たちの「アイデアノート(Notebooks)」が読み放題
- これがKaggleの最大の価値です。Notebooks機能では、他のデータサイエンティストが**「どのような分析を行い」「どのような特徴量を作り」「どのモデルを使ったか」**を、実際のコードと解説付きで見ることができます。
- 具体的に学べること:
- 特徴量エンジニアリング: 「ボラティリティ(変動率)をこう計算するのか」「価格と移動平均線の乖離率も特徴になるのか」といった、自分では思いつかないようなアイデアの宝庫です。
- モデルの実装: 最新のTransformerモデルを時系列予測にどう適用するのか、といった具体的な実装例を参考にできます。
- 過学習対策: 他の人がどのようにして過学習を防いでいるか(Cross-Validationの方法など)を学べます。
- Kaggle活用のコツ
- FXに限定せず、「Time Series Forecasting(時系列予測)」や「Stock Price Prediction(株価予測)」で検索しましょう。金融データに共通して使えるテクニックがたくさん見つかります。
ソースコードを求めるなら「GitHub」がおすすめ
GitHubは、モデル開発の**「アウトプット(設計図と完成品)」**を探したり、自身のプロジェクトを管理したりするためのプラットフォームです。

- 理由1:実際に「動くシステム」のコードが見つかる
- Kaggleが「実験ノート」だとすれば、GitHubは**「完成された製品の設計図」**です。そこには、単体の予測モデルだけでなく、以下のような実践的なコードが公開されています。
- 自動売買ボット: 予測モデルからのシグナルを元に、自動で取引を行うシステム全体のコード。
- バックテスト・フレームワーク: 取引コストや資産管理まで考慮した、より高度な検証ツールのコード。
- データ取得スクリプト: 特定の証券会社からデータを自動で取得・保存するプログラム。
- Kaggleが「実験ノート」だとすれば、GitHubは**「完成された製品の設計図」**です。そこには、単体の予測モデルだけでなく、以下のような実践的なコードが公開されています。
- 理由2:開発を加速させる「便利なライブラリ」の宝庫
- 車輪の再発明は不要です。GitHubには、FXモデル開発を効率化する便利なライブラリ(ツール群)が多数公開されています。
- 具体例:
- バックテスト用ライブラリ: backtesting.py, VectorBT などを使えば、数行のコードで複雑なバックテストを実行できます。
- テクニカル分析ライブラリ: TA-Lib, Pandas TA などを使えば、200種類以上のテクニカル指標を簡単に計算できます。
- 取引APIラッパー: OANDAなどのFX会社のAPIを簡単に操作できるようにしたライブラリ。
- GitHub活用のコツ
- 「forex trading bot python」や「algorithmic trading backtest」といった具体的なキーワードで検索しましょう。
- プロジェクトの「Star(スター)」の数が多いものは、多くの開発者に支持されている人気のプロジェクトであり、信頼性が高い傾向にあります。
プログラム言語は「Python」がおすすめ
FX価格予想モデルを開発する上で、プログラム言語は**「Python」**が現在のデファクトスタンダード(事実上の標準)であり、最もおすすめです。その理由は大きく3つあります。
- 理由1:機械学習・データ分析のライブラリが圧倒的に豊富
- Pythonには、モデル開発の各工程を強力にサポートするライブラリ(便利なツール群)が揃っています。これらを使うことで、複雑な処理を短いコードで実現できます。
- 代表的なライブラリ:
- データ処理: Pandas, NumPy (時系列データの扱いや計算に必須)
- テクニカル指標: TA-Lib, Pandas TA (数百種類の指標を簡単に計算)
- 機械学習モデル: Scikit-learn, LightGBM, XGBoost (主要なモデルがほぼ網羅されている)
- ディープラーニング: TensorFlow, PyTorch (LSTMやTransformerを実装)
- バックテスト: backtesting.py, VectorBT (現実的な検証を簡単に行える)
- 理由2:KaggleとGitHubのエコシステム(生態系)の中心である
- KaggleのNotebooksで公開されているコードのほとんどはPythonです。つまり、Pythonを学べば、世界中の優れた分析手法をすぐに自分の手で試し、理解することができます。
- 同様に、GitHubで公開されているFX関連のオープンソース・プロジェクトも大半がPython製です。他人のコードを参考にしたり、自分のプロジェクトに組み込んだりする際に、言語の壁がありません。
- 理由3:シンプルで学びやすい文法
- Pythonは、他の言語(C++やJavaなど)と比較して文法がシンプルで、人間が読んで理解しやすいように設計されています。プログラミング初心者でも学習のハードルが低く、「アイデアを素早くコードに落とし込み、試行錯誤する」というデータ分析のプロセスに非常に適しています。
コーディングは「LLMによるバイブコーディング」がおすすめ
従来のように一行一行コードを書く時代は終わりつつあります。現在は、**AI(大規模言語モデル、LLM)と対話しながら、アイデアを即座に形にする「バイブコーディング」**が新たなスタンダードです。
バイブコーディングとは、「こんな分析がしたい」「この部分をグラフにしたい」といった曖昧な指示(Vibes=雰囲気)を自然言語でAIに伝えるだけで、コードの雛形や叩き台を生成してもらう開発スタイルです。FXモデル開発のように、無数のアイデアを試す必要がある分野で絶大な効果を発揮します。
なぜおすすめなのか?
- 理由1:アイデアの即時具現化と試行錯誤の高速化
「移動平均線のゴールデンクロスを検知するコード」や「ボラティリティを計算して特徴量に加えたい」といったアイデアを思いついた瞬間に、日本語で指示するだけでコードが手に入ります。これにより、試行錯誤のサイクル(発想→実装→検証)が劇的に速くなります。 - 理由2:面倒な定型処理からの解放
データの読み込み、前処理、グラフ描画といった、毎回書くのが面倒な定型コードの生成はAIの得意分野です。開発者は、より本質的な「分析ロジックの考案」や「モデルの改善」に集中できます。 - 理由3:強力なデバッグ(エラー解決)アシスタント
エラーが出た際に、コードとエラーメッセージをAIに提示すれば、原因の特定と修正案を教えてくれます。プログラミング初心者の学習を助けるだけでなく、熟練者にとってもデバッグ時間を大幅に短縮できる強力な相棒となります。
代表的なLLMサービス
- ChatGPT (OpenAI): 対話形式で自然なコード生成や解説が得意。
- Gemini (Google): Googleのサービスとの連携や、最新情報の反映に強い。
- GitHub Copilot: エディタ(VSCodeなど)に統合され、コードを書きながらリアルタイムで次のコードを提案してくれる。



活用のコツ
- 丸投げしない: 生成されたコードは必ず自分で理解し、検証しましょう。あくまで「優秀なアシスタント」として、最終的な責任は自分が持つ意識が重要です。
- 具体的に指示する: 使うライブラリ(Pandasなど)やデータの形式を伝えることで、より精度の高いコードが得られます。
- 対話を重ねる: 一発で完璧なコードは出ません。「ここをこう直して」と追加で指示を重ね、理想のコードに育てていきましょう。
検証・バックテストは「Jupyter notebook・Google Colab」がおすすめ
モデルのアイデアを試し、その性能を評価する「検証・バックテスト」の工程では、Jupyter Notebookやそのクラウド版である**Google Colaboratory (Colab)**が最強のツールです。

これらは、「プログラムコード」「実行結果」「解説文」「グラフ」を一つのドキュメントにまとめて記録・共有できる、対話型の開発環境です。データ分析の試行錯誤を行うために作られており、FXモデル開発との相性は抜群です。
なぜおすすめなのか?
- 理由1:試行錯誤のプロセスを「見える化」できる
コードを「セル」という単位で個別に実行できるのが最大の特徴です。**「①データ読み込み → ②内容確認 → ③特徴量追加 → ④グラフで可視化」といった一連の流れを、一つ一つ確認しながら対話的に進められます。**これにより、ロジックの誤りや想定外のデータに気づきやすくなります。 - 理由2:分析結果をその場で即座に確認できる
バックテストの実行コードのすぐ下に、資産推移グラフやパフォーマンスレポート(勝率、プロフィットファクターなど)を表示できます。パラメータを少し変えてセルを再実行し、結果がどう変わるかを視覚的に比較するのが非常に簡単で、モデルのチューニングが効率的に行えます。 - 理由3:環境構築がほぼ不要(特にGoogle Colab)
FXモデル開発に必要なライブラリ(Pandas, Scikit-learn, TensorFlowなど)が、Google Colabにはあらかじめインストールされています。**面倒な環境構築でつまずくことなく、ブラウザを開けばすぐに分析を開始できます。**また、高性能なGPUを無料で利用できるため、ディープラーニングモデルの学習も可能です。
Jupyter/Colabでの典型的な活用フロー
- データ読込と可視化: Pandasでデータを読み込み、MatplotlibやPlotlyでチャートを表示して全体像を把握。
- 特徴量エンジニアリング: 新しいセルでテクニカル指標を計算し、データフレームの中身を確認。
- モデル学習と予測: LightGBMなどのモデルを学習させ、結果を評価。
- バックテストと評価: backtesting.pyなどを使い、取引戦略を検証。資産推移グラフを表示して結果を分析。
- 考察の記録: Markdownセルを使い、「このパラメータでは過学習気味だった」「次の試行では〇〇を試す」といった思考のログを文章で残すことで、自分だけの最強の「実験ノート」が完成します。
Kaggleの価格予測で「期待値が高い」モデルと手法
Kaggleの価格予測コンペで上位を狙う、あるいは実務で精度の高いモデルを構築するためには、単一の「最強モデル」を知るだけでは不十分です。優れたモデル、特徴量エンジニアリング、そして堅牢な検証手法の組み合わせが鍵となります。
結論から言うと、現在のKaggle価格予測タスクにおける「鉄板」かつ「期待値が高い」構成は以下の通りです。
主役モデル:Gradient Boosting Decision Trees (GBDT) / 勾配ブースティング決定木
テーブルデータ(Excelのような表形式データ)が中心の価格予測では、GBDT系のモデルが圧倒的な性能を誇ります。まずはこれをマスターするのが最優先です。
1. 最優先で習得すべきモデル (The Kings)
🥇 LightGBM
- 特徴: Microsoft製のGBDTライブラリ。計算速度が非常に速く、メモリ効率も良いため、Kaggleではデファクトスタンダードとなっています。多くのKagglerが最初に試すモデルです。
- なぜ強いか:
- Leaf-wise(リーフワイズ)という成長戦略により、少ない計算量で高い精度に到達しやすい。
- カテゴリカル特徴量を自動で効率的に扱える機能がある。
- まずはこれ一択と言っても過言ではありません。
🥈 XGBoost
- 特徴: LightGBMが登場するまでKaggleの「王様」だったモデル。現在でも非常に強力で、LightGBMと双璧をなします。
- なぜ強いか:
- 精度を追求するためのパラメータが豊富で、正則化(過学習防止)の機能が強力。
- LightGBMとは木の成長戦略が異なるため、後述するアンサンブルで組み合わせると性能が向上しやすい。
🥉 CatBoost
- 特徴: Yandex社が開発。特にカテゴリカル変数(性別、地域名、ブランド名など)の扱いに非常に長けています。
- なぜ強いか:
- 面倒なカテゴリカル変数の前処理(One-Hot Encodingなど)をせずとも、モデル内部で自動的に最適な処理を行ってくれる。
- 比較的小さなデータセットでも過学習しにくい傾向がある。
2. さらなる高みを目指すためのモデル (The Challengers)
🤖 ニューラルネットワーク (特にTabular-NN)
- 特徴: GBDTとは全く異なるアプローチのモデル。特に以下のような場合に有効です。
- データセットが非常に大きい(数百万行以上)。
- カテゴリカル変数の種類が非常に多い(例:ユーザーID、商品IDなど)。
- Embedding(埋め込み)という技術で、カテゴリ間の複雑な関係性を学習できる。
- テキストや画像など、テーブルデータ以外の情報も組み合わせて予測したい場合。
- GBDTと組み合わせることで、アンサンブルの効果を最大化できます。
3. モデルそのものより重要な「勝つための技術」
Kaggleで上位に入る人は、モデルの選択だけでなく、以下の技術にこそ時間をかけています。
① 特徴量エンジニアリング (Feature Engineering)
これが最もスコアを左右する部分です。「元のデータから、予測に役立つ新しい特徴(列)を作り出す」作業です。
- 価格予測で有効な特徴量の例:
- 時間に関する特徴:
- 販売された「曜日」「月」「年」「週末か平日か」「祝日か」など。
- 築年数、リフォームからの経過年数(不動産価格予測)。
- 統計量に関する特徴:
- 同じ地域の物件の平均価格、面積の中央値。
- 同じブランドの商品の平均価格。
- 組み合わせ特徴:
- 部屋の面積 * 所在地の人気度 のような交互作用特徴。
- ドメイン知識に基づく特徴:
- 「最寄り駅から徒歩5分以内か」「角部屋か」など、その分野の専門知識を活かした特徴。
- 時間に関する特徴:
② 堅牢な交差検証 (Cross-Validation)
モデルの性能を正しく評価し、過学習(手元のデータにだけ適合しすぎて、未知のデータに弱い状態)を防ぐための必須テクニックです。
- K-Fold CVが基本です。データをK個に分割し、K-1個で学習、残り1個で評価、というのをK回繰り返して性能の平均を見ます。
- 時系列データの場合は、未来のデータで過去のデータを学習しないようにTimeSeriesSplitなどを使います。
③ アンサンブル学習 (Ensembling)
複数の異なるモデルの予測結果を組み合わせることで、単一のモデルよりも高い精度と安定性を得る手法です。上位陣はほぼ100%これを行います。
- Averaging (平均化):
- 最もシンプルで強力な手法。
- 例: 最終予測値 = 0.5 * LightGBMの予測値 + 0.3 * XGBoostの予測値 + 0.2 * ニューラルネットワークの予測値
- この重みは、各モデルのCVスコアを見ながら調整します。
- スタッキング (Stacking):
- より高度なアンサンブル。
- モデルA, B, Cの予測値を、新しい「特徴量」と見なす。
- その特徴量を使って、最終的な予測を行う「メタモデル」(例: LightGBMや線形回帰)を学習させる。
実践的なワークフロー
- データ探索 (EDA): まずはデータをよく観察し、特徴間の関係や外れ値を確認する。
- 交差検証の設計: 信頼できる評価方法を確立する。
- ベースライン作成: まずはLightGBMをシンプルな設定で動かし、基準となるスコアを出す。
- 特徴量エンジニアリング: アイデアを出し、新しい特徴をどんどん追加してスコアの向上を試す。
- ハイパーパラメータチューニング: Optunaなどのライブラリを使い、LightGBMの最適なパラメータを探す。
- 多様なモデルの構築: XGBoost, CatBoost, ニューラルネットワークなど、異なるタイプのモデルも同様に学習させる。
- アンサンブル: 構築したモデルたちの予測値を組み合わせて、最終的な提出ファイルを作成する。
まとめ
- まず始めるなら: LightGBM
- 精度をさらに高めるなら: XGBoost や CatBoost を追加
- スコアを飛躍させる鍵: 特徴量エンジニアリング と アンサンブル
- 忘れてはならない土台: 堅牢な交差検証
これらのモデルと手法を学び、Kaggleの過去の価格予測コンペ(例:Mercari Price Suggestion Challenge, Zillow Prize)の上位解法を読んでみるのが、最も効果的な学習方法です。頑張ってください!
GitHubで期待値が高いとされるFX価格予想モデル
GitHub上で「期待値が高い」とされるFX価格予想モデルを見つけるには、いくつかの視点からアプローチする必要があります。単に「スターの数が多い」というだけでなく、技術的な先進性、再現性、そして実用性を兼ね備えたプロジェクトがそれに該当します。
まず、非常に重要な注意点として、FX市場の価格を安定して予測し続ける「聖杯」のような公開モデルは存在しません。 市場は非常に複雑で効率的であり、多くのプロのクオンツが競争している世界です。GitHub上のモデルは、あくまで学習・研究・開発の出発点と考えるのが賢明です。
その上で、期待値が高いとされるプロジェクトのカテゴリと、具体的な探し方や評価のポイントを解説します。
1. 包括的な取引フレームワーク・バックテストツール
特定の予測モデルそのものではなく、自分自身のモデルを構築・検証するためのプラットフォームです。これらは非常に価値が高く、本格的に取り組むなら必須と言えます。
- Freqtrade:
- 概要: Pythonで書かれた、仮想通貨向けのトレーディングボットですが、FXにも応用可能です。ストラテジーの作成、バックテスト、最適化、そして実運用までをサポートします。
- 期待値が高い理由:
- 活発に開発が続けられている。
- 機械学習モデル(scikit-learn, TensorFlow/Keras, PyTorchなど)を統合する機能が標準で備わっている。
- 詳細なバックテストレポート(ドローダウン、勝率、Profit Factorなど)を出力してくれる。
- コミュニティが大きく、情報交換が活発。
- GitHub: https://github.com/freqtrade/freqtrade
- Backtrader:
- 概要: Pythonで最も人気のあるバックテストライブラリの一つです。柔軟性が非常に高く、様々なテクニカル指標や自作のストラテジーを簡単に組み込めます。
- 期待値が高い理由:
- シンプルで分かりやすいAPI。
- 多くのブローカーとの連携実績がある。
- 予測モデルをストラテジーの一部として組み込むのが容易。
- GitHub: https://github.com/mementum/backtrader
2. 特定の先進的モデルを実装したリポジトリ
最新のAI技術(特に深層学習)をFX予測に応用しようとする研究的なプロジェクトです。これらは直接的な利益を保証するものではありませんが、技術的な示唆に富んでいます。
a. 時系列解析の王道:LSTM / GRU (RNN系)
過去の価格推移のパターンを学習するのに適したモデルです。
- 探し方のキーワード: forex prediction lstm, fx lstm pytorch, stock price prediction rnn
- 期待値が高いリポジトリの特徴:
- 丁寧なデータ前処理: 価格データを正規化したり、ウィンドウ(過去N日間のデータ)を作成するコードがしっかり書かれている。
- 明確なモデル構造: PyTorchやTensorFlow/Kerasでモデルのレイヤー構造が分かりやすく記述されている。
- 学習と評価の分離: 学習用データ(Train)、検証用データ(Validation)、テスト用データ(Test)にしっかり分けて、未来のデータで性能を評価している(Lookahead-biasを避けている)。
- 例(あくまで学習用): このようなJupyter Notebook形式で丁寧に解説されているものは、理解の助けになります。
b. 最新のトレンド:Transformer
自然言語処理で絶大な成果を上げたTransformerを時系列予測に応用する研究です。LSTMよりも長期的な依存関係を捉えやすいとされ、非常に期待されています。
- 探し方のキーワード: forex prediction transformer, time series transformer pytorch
- 期待値が高いリポジトリの特徴:
- Attentionメカニズムの実装がしっかりしている。
- 論文(”Attention Is All You Need”など)をベースに実装されていることが多い。
- まだ発展途上の分野なので、学術的なリポジトリが多いですが、技術的なポテンシャルは非常に高いです。
c. 強化学習 (Reinforcement Learning)
「買い」「売り」「何もしない」といった行動を選択し、利益という報酬を最大化するようにエージェント(AI)を学習させるアプローチです。
- 代表的なフレームワーク:
- TensorTrade:
- 強化学習による取引戦略を構築・訓練・評価するために設計されたオープンソースのフレームワーク。
- OpenAI Gymのインターフェースに準拠しており、様々な強化学習アルゴリズム(PPO, A2Cなど)と組み合わせることが可能。
- GitHub: https://github.com/tensortrade-org/tensortrade
- TensorTrade:
- 期待値が高い理由:
- 単に価格を予測するだけでなく、「最適な行動」を学習するという、より実践的なアプローチ。
- 取引コストやスリッページといった現実的な制約を環境に組み込みやすい。
GitHubで良いリポジトリを評価するためのポイント
期待値が高いプロジェクトを見つけるには、以下の点を確認すると良いでしょう。
- README.mdの質:
- プロジェクトの目的、使い方、インストール方法が明確に書かれているか?
- バックテストの結果や予測の例が示されているか?
- コードの再現性:
- requirements.txtやPipfileなどで、使用しているライブラリのバージョンが固定されているか?(これがないと、自分の環境で動かない可能性が高い)
- Jupyter Notebookやスクリプトが、上から順に実行するだけで再現できるか?
- バックテストの厳密さ:
- 最重要: 未来のデータを使って学習していないか?(リークがないか)
- 取引コスト(スプレッド、手数料)を考慮しているか?
- ウォークフォワード分析など、より現実に近いテスト方法を採用しているか?
- メンテナンス状況:
- 最終コミットはいつか?(数年間更新がないものは、ライブラリの互換性問題が起きやすい)
- Issue(課題)やPull Requestが放置されていないか?
まとめ
- すぐに使える聖杯はないという前提に立つ。
- 実践的な開発・検証をしたいなら、Freqtradeのようなフレームワークから始めるのが最も期待値が高い。
- 最新技術の学習・研究をしたいなら、Transformerや強化学習(TensorTradeなど)をキーワードに、論文実装や丁寧なチュートリアルを探すのが良い。
- どのリポジトリを見るにしても、バックテストの厳密さとコードの再現性を自分の目で確かめることが成功への鍵となります。
まずはFreqtradeを触ってみて、その中で機械学習モデルを試していくのが、現実的かつ発展性のあるアプローチとしておすすめです。
価格予想モデルに関する参考記事
以下のコンペティションは、三井物産が主催する金融予測チャレンジです。参加者は、以下の4つの市場の過去データを用いて、将来の商品(コモディティ)リターンを予測するAIモデルを開発します。
- 使用データ:
- ロンドン金属取引所(LME)
- 日本取引所グループ(JPX)
- 米国株式
- 外国為替(FX)
- 目的:
- 安定的かつ長期的な予測モデルを構築し、金融市場における取引戦略の最適化やリスク管理の精度を向上させること。
- 特徴:
- 予測対象は、単一の資産価格ではなく、2つの資産間の「価格差系列」。これは、より頑健な価格変動シグナルを捉えるためです。
- 評価指標は**「スピアマン相関係数」をベースにした特殊なシャープレシオ**。予測値の正確さよりも、価格変動の方向性や順位を安定して当て続ける能力が評価されます。
- 提出はKaggleノートブックで行い、未来のデータが見られない(タイムトラベル防止)仕組みになっています。
- 提出締切後、**実際の市場データでモデルを再評価する「予測フェーズ」**があり、これが最終順位を決定します。
以下の論文は、通常は極秘とされるクオンツ取引の世界で実際に使われる101個の投資戦略(アルファ)の具体的な計算式を世界で初めて公開した、非常に画期的な研究です。
- 目的: 秘密主義に包まれたクオンツ取引業界を「非神秘化」し、学術研究者や後進のクオンツアナリストに具体的な知見とインスピレーションを与えること。
- 内容:
- 101個のアルファの公開: Alpha#1 から Alpha#101 まで、具体的な計算式をコード形式で提示。これらは主に価格と出来高データから作られる短期的な戦略(平均保有期間0.6〜6.4日)。
- 実証分析: これらのアルファのパフォーマンスを分析し、以下の重要な性質を明らかにした。
- アルファ間の相関は平均15.9%と低い。これは、複数を組み合わせることでリスク分散が効くことを意味する。
- アルファのリターンはボラティリティ(リスク)に比例する傾向がある。
- アルファのリターンは売買回転率(取引頻度)とは無関係である。
- 意義: この論文は、それまでブラックボックスだった「アルファ」の具体的な姿を白日の下に晒しました。これにより、多くの研究者が現実的なモデルを検証したり、新たなアイデアの土台として活用したりすることが可能になり、クオンツファイナンスの研究を大きく前進させました。
「101 Formulaic Alphas」の論文を「思想」「疑似コード」「Pythonコード」の3点セットで解説したものです。
このsb3-contribは、人気の強化学習ライブラリ「Stable-Baselines3 (SB3)」の公式な拡張パッケージです。
- 目的: SB3本体の安定性を保ちつつ、最新論文で発表されたような実験的な強化学習アルゴリズムやツールを、コミュニティが開発・共有するための場所を提供すること。
- 特徴:
- SB3本体ほど厳格な基準(汎用性やコード統合のしやすさ)を求めず、よりニッチで先進的な機能を受け入れる。
- TRPO、RecurrentPPO、TQCなど、SB3本体には含まれていない高度なアルゴリズムが実装されている。
- SB3の高いコード品質やドキュメントのスタイルは維持されているため、信頼性が高い。
- 対象者: SB3の安定した基盤の上で、より先進的・研究的なアルゴリズムを使いたい研究者や開発者。
簡単に言えば、**「SB3本体が『安定版』なら、sb3-contribは『実験・先進機能版』」**という位置づけです。
この論文は、金融時系列データのノイズを除去し、トレンドをより正確に捉えるために「カルマンフィルター(KF)」をテクニカル指標として応用するという研究です。
- 問題意識:
移動平均線は価格の平滑化に役立つが、「ラグ(遅延)」が避けられない。DEMAやTEMAのようなゼロラグ移動平均も存在するが、価格の「ダイナミクス(動きの勢い)」までは捉えられない。 - 提案手法:
もともとミサイル追尾などに使われるカルマンフィルターを応用。KFは、ノイズの多い観測データから、対象の「真の状態(例:価格と価格の変化率)」を最適に推定するアルゴリズムであり、ラグを最小限に抑えつつダイナミクスをモデル化できる。 - 検証:
単純なKFから、トレンドの短期・長期要因やオシレーターの概念を取り入れた複雑なものまで、4種類のKFモデルを構築。S&P500先物データで取引戦略のバックテストを行った。 - 結果と結論:
- KFはDEMAやTEMAといった高性能な移動平均よりも価格への追従性が高く、ラグが少ない。
- 最も洗練された**モデル4(短期/長期要因+オシレーター)**が、年間約4万ドルの利益を上げ、他のモデルを圧倒。
- トレンドフォローとオシレーターの概念をKFに統合することが、極めて有効であることが実証された。
要するに、**「移動平均の代わりに、より高度な数学的ツールであるカルマンフィルターを使えば、ラグが少なくダイナミクスも捉えた、もっと儲かるテクニカル指標が作れる」**ことを示した論文です。
このGitHubリポジトリは、金融時系列データ、特に暗号資産の価格分析に「カルマンフィルター」を応用するためのオープンソース・教育用Pythonコードです。
- 目的:
カルマンフィルターを用いた高度な移動平均(MA)を学習・研究するためのリソースを提供すること。これは投資助言ではなく、あくまで教育目的のコードです。 - 実装されている主な機能:
- 固定QカルマンMA: 最も基本的な、パラメータが固定されたカルマンフィルター。
- ATRベース動的カルマンMA: ATR(ボラティリティ指標)に応じてフィルターの感度(追従性)が動的に変化する、より洗練されたモデル。
- 拡張モデル3カルマンMA: Benhamou(2016)の論文に基づき、トレンドを**「短期要素」と「長期要素」に分解**して追跡する、最も高度なモデル。
- 特徴:
- Benhamou(2016)の論文で提案された高度なモデルを、誰でも使えるPythonコードとして実装。
- 価格の正規化や動的なノイズ調整など、実用上の数値的安定性を高める工夫が盛り込まれている。
- 各手法の特性(追従性 vs 平滑性)や、パラメータ調整のガイドラインが丁寧に解説されている。
要するに、**「カルマンフィルターを使った高機能な移動平均線を、Pythonで手軽に試せる教育用ツールキット」**です。
バックテストデータはこちら。