この記事ではFXの「ロンドンフィキシング」について、初心者の方にも分かりやすく解説します。
ロンドンフィキシングとは?
一言で言うと、「為替市場で非常に大きな取引が集中し、相場が急変動しやすい特定の時間帯」のことです。
正式には、ロンドン市場で金のスポット価格(対米ドル)を決定する時間(値決め)を指しますが、その影響で為替市場でも重要なイベントとなっています。トレーダーの間では「ロンフィク」や「ロンドンフィックス」とも呼ばれています。
◆ いつ行われるの?
基準となる時間は、ロンドン時間の午後4時です。これを日本時間に直すと、季節によって変わります。
- 英国夏時間(3月最終日曜〜10月最終日曜):日本時間 午前0時 (24:00)
- 英国冬時間(10月最終日曜〜3月最終日曜):日本時間 午前1時 (25:00)
※米国のサマータイムとは期間が若干異なるため、3月や11月の一部期間で1時間のズレが生じることがあります。取引の際はご注意ください。
なぜ為替市場に大きな影響があるのか?
ロンドンフィキシングの時間帯に為替の取引が活発になる理由は、主に2つあります。
1. 機関投資家の「リバランス」
これが最も大きな理由です。
年金基金や投資信託といった巨大な資金を運用する機関投資家は、月末や四半期末、年末に、自分たちの資産の比率を調整(リバランス)します。
【具体例】
ある米国の年金基金が、「資産の10%は日本の株式で保有する」というルールを設けているとします。
- 今月、日本の株価が上昇し、日本株の比率が12%に増えてしまった。
- ルール(10%)に戻すため、超過した2%分の日本株を売却する必要がある。
- 日本株を売ると、手元には「日本円」が残る。
- この年金基金は米国にあるため、最終的に「米ドル」に両替する必要がある。
- つまり、「日本円を売って、米ドルを買う」という巨大な為替取引が発生します。
このような世界中の機関投資家からの莫大な量の為替注文が、公平な価格で取引を行うため、ロンドンフィキシングで決定される「WMR(World Market/Reuters)レート」を基準に行われます。その結果、この時間帯に注文が殺到するのです。
2. 実需筋の取引
輸出入企業などが、貿易代金の決済を行うために、この時間帯のレートを基準に為替取引を行うことがあります。これも相場を動かす一因となります。
ロンドンフィキシングの特徴とトレーダーへの影響
この時間帯は、FXトレーダーにとって非常に重要です。
- ボラティリティ(値動き)が非常に高くなる
買い注文と売り注文が拮抗すれば値動きは小さいですが、どちらか一方に注文が偏ると、一方向に相場が急騰・急落することがよくあります。特に月末の金曜日は、リバランスの注文が集中しやすく、最も荒い値動きになりがちです。 - トレンドの転換点になりやすい
フィキシングに向けて一方向に動いた相場が、その時間帯を過ぎると大きな注文が一巡するため、ピタッと止まったり、それまでの動きと逆方向に進んだり(行って来い)することが頻繁に起こります。 - 投機筋の動きが活発になる
この大きな値動きを狙って、ヘッジファンドなどの短期的な利益を狙う投機筋が参入し、さらに値動きを増幅させることがあります。
トレーダーが注意すべきこと
ロンドンフィキシングは大きな利益を狙えるチャンスでもありますが、同時に非常に高いリスクを伴います。
- 初心者は取引を避けるのが無難
値動きが予測不能なほど激しくなることがあるため、慣れないうちはこの時間帯(日本時間深夜0時〜1時の前後30分程度)の取引を避け、相場が落ち着くのを待つのが賢明です。 - 取引する場合の心構え
- 必ず損切り(ストップロス)注文を入れる: 予期せぬ急変動で大きな損失を被るのを防ぐためです。
- レバレッジを低めにする: リスクを抑えるために重要です。
- 月末、特に金曜日は最大限に警戒する: 1年で最も荒れる日と言っても過言ではありません。
まとめ
- ロンドンフィキシングは、機関投資家のリバランス注文などが集中する、日本時間深夜0時(冬時間は1時)を中心とした時間帯。
- 為替レートが急騰・急落しやすく、ボラティリティが非常に高まる。
- 大きなチャンスがある反面、高いリスクも伴うため、特に初心者は注意が必要な「イベント」と覚えておきましょう。